- 2014年06月06日
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もともと太陽光発電は単純に再生可能エネルギー事業の中の一つとして、風力発電、地熱発電、バイオマス発電など、新しいエネルギー源として研究・開発が進められてきました。
日本では1990年代初頭から住宅用太陽光発電の装置(ソーラーパネル)が本格的に販売されるようになり、徐々に普及してきたのですが、ソーラーパネルがごく普通に住宅の屋根などに頻繁に設置されるようになったのはここ5、6年のことですね。さらに一般の方にまで太陽光発電という言葉がごく当たり前のように浸透したのが、2012年にFIT(Feed-in Tariff:再エネ普及のため、電力会社に再エネで発電された電気を一定期間、固定価格で買い取ることを義務づけた制度)が施行されてから。つまりここ3、4年くらいの話だと思います。
太陽光発電がここに来て急速に普及、浸透したのはFITの影響だけでなく、同じ再生可能エネルギーの風力やバイオマスなどと比べて、仕組みも構造も一番シンプルで分かりやすいからです。少し言葉は悪いですが、素人さんにとってもかなり扱いやすいエネルギー事業ということです。
そうした理由もあって、企業も個人も積極的に太陽光発電の推進に努めてきましたし、国もあまり手がかからず広げやすかったので、さまざまな助成金や補助金、買取り価格の補填などの制度を導入し、非常に優遇された市場になっていったのです。こうして、もともとかなりニッチな市場だったところへ、個人も含めいろんな分野の企業や団体が一挙に流れ込んできた、というのがここ最近の太陽光発電市場の潮流ですね。
太陽光発電業界のビジネスニーズが広がっている
太陽光発電業界に吹きはじめた新たな風「O&M」
―なるほど。でもこのまま一気に太陽光発電事業の市場が拡大していくかと思いきや、ここに来てややブレーキがかかっているんですよね?
ブレーキというより、ここへ来てちょっと太陽光発電市場は少し落ち着きを見せてきた、という表現が正しいかもしれません。ブームがやや下火になったというか、行政としても、「他のエネルギー事業、バイオマスや水力や風力などにもっと予算を回そう。太陽光は軌道に乗ったみたいだから、長期運用は必要だけれどこれ以上無理に拡げる必要はない」と考えているのです。ところが実際のところはどうかというと、やはり太陽光はエネルギー事業者さんにとっては一番やりやすい分野なので、皆さんまだまだ太陽光発電事業に力を入れているというのも事実です。他のエネルギー事業にはまだそこまで力が入っていないように見えますね。
ただ、太陽光発電によって作られた電力の買取り価格が下げられてしまったこともあり、やや市場拡大にかげりが見えてきたので、「太陽光発電の販売・設置事業などに替わる何か新しいマーケットはないのか?」ということで、今「O&M」(オペレーション・メンテナンス)つまり「太陽光発電装置の運転管理・保守点検」を行うセカンダリービジネスが、近年注目を集めているのです。
「太陽光パネルのメンテ不要」はウソだった!?
―メンテナンスを行うビジネスが拡がりを見せている、とのことですが、そもそも太陽光パネルってそんなにメンテナンスが必要なものなんですか?
一般的に「太陽光パネル」「ソーラーパネル」と言われているものは、我々の業界では「モジュール」(太陽光発電モジュール)と呼ばれていますが、現在国内でこのモジュールを生産・販売しているのは、大半が大手電機メーカーさんです。この分野では歴史の古いシャープをはじめ、東芝、三洋、パナソニック、三菱電機などですね。
こうした電気メーカーはもとより、販売・施工会社などがモジュールを販売するときに必ず言ってきた決まり文句があります。それは、「太陽光発電は、一度取り付けてしまえばあとはメンテナンスの必要はありません」、つまりメンテナンスフリーだということです。確かに太陽光発電のモジュールは非常にシンプルな構造で、光が当たれば自動的に発電して、あとはその電力をパワーコンディショナーという機器で直流から交流に変換して、消費されるだけです。太陽光パネル自体には電源も付いておらずオンもオフもない。電源もないくらいシンプルな製品なので、「操作を誤って事故を起こすこともないし、保守点検、メンテナンスなどまったく必要ない」と頭にうえこまれてきたのです。しかし実際はそうではありませんでした。
―太陽光パネルの設置後にトラブルが発生するようになった、ということですか?
そういうことです。実際にモジュールを取り付けて何年かすると、焼損事故など様々なトラブルを起こすようになったのです。電源がないから、何かシステムにトラブルが発生したことが分かったとしても、すぐには止めることができない。こうしたトラブルが頻発、表面化してきたことによって、先ほどお話したように、太陽光モジュールのO&Mサービスに注目が集まってきたのです。もう少し詳しく説明すると、太陽光モジュールの問題点、メンテナンスの重要性に光が当たるきっかけを作ったのは、とある行政法人の方でした。ちなみにこの行政法人は、国からの支援によって成り立つ太陽光を世の中に拡げていきましょう、といういわば太陽光推進派の団体です。
その行政法人のとある工学博士が、「太陽光は本当にメンテンスフリーなのか?」と疑問に思い調査した結果、次から次へといろんな不具合や欠陥が出てきた。そしてその調査結果をいろんな場所で発表しはじめたのです。当初メーカー側はこうしたトラブルを否定していましたが、徐々に対応への取り組みを始めました。一方、民間でもボランティア団体や、この問題に対応するネットワークができ、地道な草の根活動が広がりました。そうした活動が5、6年続き、新聞などマスコミも注目しはじめて業界全体にも火がつき、このような経緯を経て、今ようやく太陽光発電事業におけるセカンダリーマーケットとしての「O&M」ビジネスが確立されてきたのです。